ひとやすみ

タカダワタル

今日は私の好きなミュージシャンの紹介をしたいと思います。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%94%B0%E6%B8%A1

高田渡

この人を知ったのは、友人のブログを見て、YouTubeで見たのがきっかけです。インターネットのいいところは、”誰かが残せば残る”というところです。生産→流通→販売、という手続を、店舗を介さなければできなかったころは、”消えてなくなる”ものが、たくさんあったと思います。じゃあ今は”どんなものでもいつまでも”残るか、というとそういうわけではないのですが、流通にのっからなくても、広い範囲で有名にならなくても、”確かな価値(少なくとも一人以上の人が一定の期間以上、一定の熱意以上でその価値を支持する)”があれば、共有することが可能である、という時代にはなったと思います。

「放送禁止歌」の特集を友人がブログで共有していて、その中に、表記のミュージシャン高田渡の「自衛隊に入ろう」という曲が入っていました。自衛隊ができたころにつくられたこの歌、当時の社会情勢を思い起こして、「なんてオシャレな歌だ!」と思いました。

https://www.youtube.com/watch?v=YvAoC0uYXCk

それから色んな曲を、今レコードは手に入らないので、YouTubeや古いCDを通して聞くようになり、すっかりファンになってしまったのですが・・

このロメウスイッチでも、「考えるヒント」をくれるステキなミュージシャンだと思ったので、今日このように紹介しています。


例えば消費税増税。民主党政権のころ、管直人首相が10%に増税の話をしたときは、すごい剣幕でバッシングしていた世論が、現政権で8%に増税の際は驚くほど静かだったことは、記憶に新しいです。そのとき聞いた歌が、高田渡の「値上げ」です。

https://www.youtube.com/watch?v=U5lx64va3vo

矛盾の中で生きる

日本人として日本で暮らしていると、人権・個人・市民社会という西洋から輸入した概念と、江戸時代までに定着した身分の概念やモラルや価値を自身の内部ではなく集団に見出す考え方、などがせめぎ合い、多かれ少なかれ矛盾を感じながら生きる、というのは多くの人が経験していることだと思います。

例えば人間はみな平等、と社会や道徳で習いますが、国語では「立場の上下を意識することの大切さ」を敬語の授業で習います。基本的人権やひとりひとりの尊厳の大切さも授業で習いますが、テレビでは毎日のように、人格を否定し、尊厳を傷つけるような表現が目に入ってきます。倫理の授業では”共存の大切さ”も教わりますが、学校全体は”受験戦争”の真っただ中ですし、メディアは勝ち組負け組の差をこれでもかと見せつけるし、家庭でも競争で勝つことを強要する教育をすることが少なくありません。

習ってるそばから矛盾だらけな教育環境で私たちは育つわけです。先生たちもそれは知ってるはずなのですが、教科として教えることに終始して、なかなかそれ以上のことを教えるほど時間も手間もかけられない、というのが大勢のようです。かといって家庭やメディアでそれを修正してくれるわけでもない。どこの国にもどんな社会にも矛盾はありますが、少なくとも「葛藤の仕方」を教えてくれる環境が大切だと、個人的には思います。しかし多くの場合、「そういうもんだ」「仕方がない」という言葉しか返ってこない。。社会に出ても同じような、いやむしろもっとキレイゴトじゃない状況が続く。。

こんなときに聞くのが、「あきらめ節」です。

http://www.youtube.com/watch?v=3lgxJnBbxMc

世間を見渡すと、この西洋の概念を信じて推し進める人たちを概して左、日本・東洋の概念、その中でもとりわけ集団の概念を大切にして組織的に活動する人たちを概して右、という風に呼び、せめぎあっています。まだまだ社会がどういう形になるのか、答えは出ていないですね。ひとつの変化が社会に大きく影響し、たくさんの人が右往左往します。何が正しいか、なんてことはとても流動的で、社会全体が自己矛盾を抱えています。その狭間でたくさんの人が悩んでいることを、仕事や放送、NGOを通して目の当たりにします。「考える」という行為はとても孤独です。だからこそ相談するし、議論する。だからこそ芸術を愛するんだと、強く思います。


最後に夏目漱石の「草枕」を引用して終わります。

山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智ちに働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟さとった時、詩が生れて、画(え)が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろ)げて、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人という天職が出来て、ここに画家という使命が降くだる。あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊たっとい。


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