2015.10.1医療事故調査制度が施行されます

2014.10.23の記事で、「これって医療ミスじゃないの!?」と題して、医療事故分野での紛争予防を考えました。
患者側弁護士として医療事故調査や医療事故損害賠償請求事件に携わる中で、
「医療機関の過失を考えるのではなく、どうしたら医療事故の結果を防げたかを考える」
という視点に気付かされたと書きました。
また、重大な結果を目の前にして、医療事故紛争を解決するには、
医療機関も患者も「どうしたら医療事故の結果を防げたか」についてフェアに議論すること
が望ましいのではないかという意見も書きました。

医療事故調査制度は、2014.6.18に成立し、来年10月1の施行を待つ制度です。
制度の概要等は、厚生労働省のHPで見ることができます(www.mhow.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html)。
HPには、次のように書いてあります。
「医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止につなげるための医療事故に係る調査の仕組み等を、医療法に位置付け、医療の安全を確保するものです。」
他にも、制度は、患者が死亡したケースに限定していることや、損害賠償責任を論じるものではないことなどが説明されています。

第三者の目が光る

さて、これまでも患者が死亡したり重篤な後遺症を残したりするケースでは、医療機関において院内調査が行われ、それが医師会を通じて収集・分析され、各学会や厚生労働省でガイドラインとして公表されることで、より安全な医療の実現が目指されてきました。
今回の医療事故調査制度は、やはり民間の第三者機関による収集・分析が行われるところがポイントと言えそうです。
2014.9.22の記事で、「他人の目が気になって仕方がない!」と題して、STAP細胞を題材に第三者委員会という制度の視点について書きました。
そこでは、第三者の目を入れるという行為は、紛争処理の方法、結果についての信用性をあげるもので、
「自分たちだけで勝手に処理していません。第三者にも見てもらっています。」という視点ですが、
「でも、最終的な責任は当然自分にあります。」と書きました。

施行を待っている医療事故調査制度についても、やはり一番重要なのは、これまでの医療事故調査と同様に、
「院内調査でどこまで真実が明らかになるか」だと思います。
その視点で民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が本領を発揮してもらいたいと思います。

損害賠償責任との関係

医療事故調査制度は、再発防止を目的とし、責任追及を目的としていません。
懲罰を伴わない、患者も医療機関も特定されないといった制度設計がされています。
このことについてはどう感じるでしょうか。
生ぬるい!そんな制度だったら意味がない!と批判される方もおられるかもしれません。

これまで各学会や厚生労働省が発表したガイドラインを策定する調査の性質を踏襲するものです。
損害賠償責任がチラチラと見えれば、院内調査の内容に影響があることは否定できないでしょう。
私は、出発点として、「事実に誠実な院内調査」が行われる風土を築くには、この制度の性質(責任非追及型)は正しいと思います。
まずは、日本の医療機関において、医療事故が起きた場合に、恐れず「事実に誠実な院内調査」が行われる土壌を作ることが大切です。

説明責任との関係

では、患者や遺族との関係ではどうでしょう。
そこの場面は、医療機関の患者に対する説明責任が問題となります。法的には診療契約の内容として説明責任が導かれます。
この場面でフェアな議論がなされることが、起きてしまった医療事故の解決を図る上で避けては通れないプロセスです。
これが医療機関と患者の間で実現できれば、医療事故裁判は不要になります。

依頼を受けた事件で悠長なことは言っていられませんので、調査に続き責任追及(ないし責任追及を目的にした調査)となります。
しかし、社会全体の方向性としては、
①医療機関による「事実に誠実な院内調査」
②「事実に誠実な院内調査」の結果を資料とした、医療機関と患者・遺族のフェアな議論
③「事実に誠実な院内調査」の結果を資料として、医療機関・医師会・厚労省等による再発防止策の検討
④「事実に誠実な院内調査」の結果を資料として、新しい制度(民間の第三者機関による調査)による再発防止策の検討
を丁寧に行っていくことが良いと思います。

私も弁護士として自分が携わるプロセスがどこに位置付けられているのか意識しながら取り組みたいと思います。